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草系リキュールのなかにあって、辛口で特異な風味をもった酒にパステイスがあります。これはアニス風味の酒で、ヨーロッパ(特に地中海沿岸諸国)ではよく飲まれています。
最近、日本でも人気のピーター・メイル著「南仏プロヴァンスの十二ヶ月」の本の中にも随所にパステイスを飲む場面が出ていて、ちょっとしたブームになるかと思われましたが、日本人の嗜好にはジャスト・フィットしなかったようです。パステイスというと、先ず思い出されるのが、かの悪名高きアブサンです。
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| パステイスの元祖 |
パステイスの元祖「アブサン」、フランスでは「アブサント」、イギリスでは「アブシンス」、日本では「アブサン」と呼んでいます。語源はラテン語のabsinthium(アプシンジウーム・苦よもぎ)。アルテミシア・アプシンジウム(Artemisia absinthium)の学名よりきた名前といわれています。アニス系の酒は、フランスでは薬酒として古くから飲まれていたそうです。
18世紀の末頃、フランスの薬草学の権威、オルジネール博士がアブサンの処方を考案し、それをアンリー・ルイ・ペルノー氏に伝授しました。ベルノー氏はスイスのクーペ市にペルノー・フイス社を設立し、オルジネール博士直伝の処方でアブサンの製造を開始しました。1805年には需要の多いフランス・ポンタリセ市に工場を移し、本格的に製造するようになり、その後リヨン市やモンペリニ市でも製造されるようになりました。
アブサンの製法は秘伝で公開されていません。種々な資料によると苦蓬(ワームウツド・Wormwood)の葉と頭状花の蕾を陰干し挽き砕き、これに茴香(フェンネル・Fennel)、アンゼリカ(Angelica)、苦扁桃(ビターアーモンド・Bitter
almond)、タンジー等の香草、薬草、十数種類ほどをスピリッツに浸してニキスを抽出する浸漬法と、二日間程浸してから三回蒸留する蒸留法とがあり、いづれも酒精度の高いものが造られていました。(60・70度)
アブサンはワームウツドの芳香に富み、淡い苦味があって、少量の水を加えるとアルコールで押さえられていた、ワームウツド、キャラウエイ、タンジーなどの油成分がはじけて、乳白色に変化する特徴をもっていました。19世紀の初めにはフランス陸軍がこれを解熱剤として採用しました。しかし、アブサンは酒精度の強い酒で、これを常飲すると習慣的、その主成分のワームウツドなどに中毒性があるため、やがてはアブサンティームという中毒症状を起こすようになります。この症状はひどくなると、アヘン、コカインなどの薬物中毒より悲惨なものといわれています。故に、フランスでは国民の精気を著しく消失するということで、第一次世界大戦当時の1915年(スイスでは1907年)に法律をもってアブサンの製造販売を禁止しました。そこで台頭してきたのがアブサンのイミテーション・アニス酒(パステイス)でした。 |
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| アブサンの代用品アニス酒「パステイス」 |
パステイスという名前は南フランスの方言で「似せてつくる」をパスティシェ(Sepastiser)というところからきたといわれています。パステイスもアブサン同様に禁止されたのですが、こちらのほうはあまり厳しくは取り締まられなかったようです。しかし、第二次世界大戦の時にはフランス政府が出したアニス酒禁止令で製造を中止。再スタートは戦後数年を経てからでした。アブサンはワームウツドの成分に中毒性があるために禁止されましたので、その代用品のパステイスはアニス、スターアニスを主にリコリスやフェンネルなどを香味成分とし、酒糟度も45度に押さえられています。 |
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| アニス酒とパステイスが仲間創れ? |
EU(ヨーロッパ連合)の定めによると、「アニス、スターアニス、フェンネルなどを使いアルコール40度以上で製造されたものをアニス酒。リコリス、アニス、ディルなどを使いアルコール40度以上のものをパステイスと呼ぶ」という厳密な規定が設定され、さらにパステイス・ド・マルセーユという原産地呼称の表記を認め、アルコール45度以上としています。 |
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| ペルノとリカールは兄弟 |
従ってEUの規定によると、皆様よくご存知のかつてのアブサンの代名詞といわれたべルノは「アニス酒」であり、リカールは「パステイス」となります。そして両社は1975年に合併しましたので、正真正銘の兄弟酒となりました。 |
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| アニス系の酒いろいろ |
アニス系の酒は地中海沿岸の国に多く、スペインのアニス・デル・モノ、アニス・マチヤキート、イタリアのサンブーカ、アニゼツタ・ステラータ、ギリシャのウゾ、トルコのラキ、そしてフランスのペルノほかアニゼット、オクシー、オクシジュネなど辛口から甘口まで数多くあります。 |
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| パステイスいろいろ |
トップ・ブランドのリカール、パステス51、マルチィン・フェヴル、パステス・プラド、ジョン・ボワイェ・ニメロードなどがあります。後、日本にもS社のヘルメス・アブサンというアニス58度があります。パステイス、アニス酒はいろいろな薬、香草の薬効成分を抽出した酒ですので、水割りやソーダ割でアペリティフとして飲むのが一般的でしょう。ブイヤベース、ラタトゥユ(野菜の煮込み)、アンチョビー、また、ピザなどイタリア料理との相性もよいと思います。 |
文●カクテル・アーティスト 吉田 貢(Y&MBar KISLING) |