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水割りはカクテル?
 水割りはカクテルではない。水割りです。「水割りをください」というと、ウイスキーがベースです。「ウイスキーの水割りをください」などと言わなくても、「水割り」で十分通じるのです。つまり、「水割りは完全に市民権を得ているのです。それは、カクテルでも、ウイスキー・クーラーでもなく、「水割り」なのです。理屈は不要です。水割りはカクテルではなく、「水割り」なのです。「水割り」として確立しているからです。
 では、カクテルとは何なのか。単なる複数材料のミックス・ドリンクではなく、カクテルとは、厳しい修業を積んだバーテンダーのみに与えられる「酒育ての芸術」である。大塚徹流カクテル定義。
 
文●カクテル・アーティスト 大塚 徹(パイプのけむり)

 2時間のパーティー会場において、多い時は3,000〜4,000杯の水割りを作ってきた経験をもつ者として、ウイスキー水割りをカクテルと考えるか否かと問われれば、即座に「否!」と答えます。バーテンダーとして、パー・カウンターの中でお客様を前にして注文に応じるウイスキーの水割りは、心の中ではカクテルとしてとらえても良いと思いますが、一般論としては水割りはカクテルであるとは考えないほうが良いと思います。理由は、レシピが確立されていないからです。好みに応じて作るものであって、氷の量(1コだけ、たくさん、入れないで)、水の量(少しだけ、半々、多量に)、混ぜないで、良く混ぜて、ウイスキーをフロートさせて、等々、個人の好みで作られるものだと思います。カクテルの定義として、複数の材料を指定された方法と分量によって作るといった考え方には、入らないものとしてとらえるべきものではないでしょうか。
 
文●今泉 康治

 一口にカクテルと言っても、狭い意味で使われている場合と、広い意味で使われる場合の2通りの用い方がされています。
 (1)狭い意味での場合:カクテルグラスに入れて飲む物を指します。例えば、マティーニ・カクテル、マンハッタン・カクテル、 サイドカー・カクテル、アレキサンダー・カクテル、ダイキュリー・カクテル等、カクテルの前に必らず名前が付いています。
 (2)広い意味での場合:混合飲料の全てを指します。ミックスドリンクと言います。つまり、一つ一つがスタイル(形態)となっています。サワー、フィズ、クラスター、ハイボール、スリング、パンチ、等に約25〜27種類にわたって、グループ名に分類されています。そして、ペース(使用したお酒)が、必ず名前に付いています。
 水割りはハイボールのグループ(スタイル)の中に入ると思います。ベースの酒を、ソーダ水、冷水、ジンジャエール、コーラ、トニックウォーター等々、清涼飲料水で割るものである。したがって、カクテルのグループでないので、カクテルとはいわない。水割りはハイボールである。
 
文●匿名希望

 カクテルとは通常、数種の酒、果汁、薬味などを混ぜ合わせた飲料のことなんです。単一の酒類や果汁、清涼飲料水などをそのまま飲むストレートドリンクに対して、いくつかの材料を混ぜ合わせた飲料をミックスドリンクと呼んでいますが、カクテルは、このミックスドリンク全般を指す言葉として使用されているので、広い意味ではアルコールの有無に関係なく、2つ以上の材料を混ぜ合わせてつくる飲み物がカクテルといえるんですが、水割りは、私はロングドリンクと呼んでいます。
 
文●福島 勇三

 水割りとは、非常に高度なカクテル調整技術を要求されるアルコーリック飲料のひとつではあるが、カクテルとは一線を画すアルコーリック飲料である。
 酒プラス、アルファという広義のカクテルの観点でいえば、カクテルに属すると言うことが出来るでしょう。実際に水割りをハイボールのカテゴリーとして明記してあるカクテル・ブックも出版されています。水割り作りには、ベースの酒のチョイス、しっかりとした分量調合、スムーズなステア技術、氷の加え方、割り水の選択、などバーテンダーの知識や技術によって大きく味わいに変化を及ぼす飲み物で、カクテルの調合技術が大きく関与している点においても、カクテルと呼ぶにふさわしい飲料であると考えられます。
 しかし、カクテルには作り手の個性や時代に合わせての微妙なレシピの変化、バリエーションの多様化といった柔軟性を持ち合わせていて、そこがカクテルの魅力のひとつだと考えています。ジントニックにライムやレモンを好みにより絞り込む、サイドカーにオレンジスライスを加えてシェイクする、等といったアレンジは各バーテンダーの感性や時代の要求によって無限の可能性で進化と変化を続けていきます。ですが、もし水割りをカクテルと言い切って、このようなアレンジが水割りにも平然とされるようになってしまってはどうでしょうか。あくまでも水割りはベースの酒プラス水であってアレンジの限界点は、グラスの選定、水質の選定、割合の微調整、氷の有無・大小、ステアの有無、提供温度の微調整等で、これ以上は越えてはならないというアレンジの限界線をどこかで引くべき存在であり、そこが最大のカクテルとの相違点ではないかと考えます。
 この相違点においてカクテルではないという意見を私の見解とさせていただきます。しかし、水割りを提供するにも"お客様に喜んで頂こうとする気持ち"がもっとも重要で、その点においてはカクテルに同じ、と肝に命じてお作りしなければ、と思っています。
 もうひとつの私の見解があります。水割りがカクテルか否かを決めるのはお客様です。カクテルのようでカクテルでない飲料もあり、バーテンダーなのにバーテンダーでない人もいて、水割りなのにカクテルを越えた飲み物もある。それを決めるのはお客様であり、それに困惑しているのもお客様。それをしっかりした仕事でお客様を惑わさないように努力するのがバーテンダーの仕事であり、目標だと思っています。
 
文●カクテル・アーティスト 中垣 繁幸(BAROSSA COCKTAIL D'ARTISAN)
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